閉店前のスーパーマーケット

閉店5分前のスーパーマーケットに、仕事帰りに立ち寄ったんですよ。
ちょっと食べたいモノがあってね、なんの気なしに訪れたんです。
間もなく閉店というコトで、店内には「蛍の光」がうやうやしく流れておりました。

のんびりと、普通に買い物をしていたら、突然BGMの「蛍の光」がアップテンポになったんですよ。
それも尋常じゃない、すごく早いんです。
曲調はそのままなのに、まるで6倍速で再生しているかのようなスピードに、思わず心臓がドキドキしました。

「こりゃなるべく早く買い物を済ませないといけないみたいだ」
そう思いながら周りを見たら、ほとんどのお客さんが早回しの無声映画みたいに、妙にソワソワしながら商品をカートに入れたり、レジまで小走りに急いでいたりして、閉店前のスーパーってこんなに慌ただしいんだ………と、初めて知りました。

それにしても、見事な心理作戦ですね。
あんなに早いスピードで「蛍の光」を流されたら、「この音楽が終わるまでに買い物を済ませなくてはいけない」って、自然と思っちゃいますから。

レジでぼくの前に並んでいたおばさんなんか、「はぁはぁ」と息が切れていて、すっごくかわいそうでした。

ある意味、罪づくりですね。

もう二度と閉店前のスーパーマーケットになんか行くもんか………って、つくづくそう思いましたよ。