夏にふさわしい話

数年前まで、この季節からお盆頃にかけてのテレビ番組では、特別編成で「心霊特集」というプログラムがよく組まれていました。
でも今では、昨今のホラーブームで、この手の話は一年中特集されています。
というより、冷房が快適に効いている部屋の中では、「背筋が寒くなる」必要もありませんから、別に今じゃなくてはいけないという必然性が薄くなったのかも知れませんね。

誰でもひとつやふたつ、忘れられないほど怖い話を聞いたり体験したりしているかと思いますが、ぼくもそんな話をひとつ持っているんですよ。
実体験ではないので、真意のほどは有耶無耶ですけどね。

ぼくが東京の専門学校(グラフィックデザイン系)に通っていた頃、千葉にある学校の寮に宿舎していた友人から聞いた体験話です。


それは、入学して一年目の初秋の頃の出来事………。
深夜遅くまで課題の制作に熱中していた彼は、何の気なしに窓を見たんです。
カーテンが開いていましたので、窓には部屋の様子がぼんやり反射して映っていました。
彼は窓を開けて外の空気を吸おうと思い、立ち上がったんです。
するとその時、スー〜〜〜っとゆっくり、窓の外を横切る人影が見えたんですって。
影は一瞬、部屋の中を窺うように動きを止めたんですが、そのまま横切って行きました。
「こんな夜遅くに帰って来るなんて、門限はとっくに過ぎているのに………」
眠い気持ちをこらえながら窓を開けようとした彼は、思わず背筋が凍ってしまいまいした。
なぜならば彼の部屋は、二階だったんですよ。
寮なのでベランダはなく、横切った人影が歩けるだけのヒサシもない。
その日から彼は、夜には必ずカーテンを閉めるようにしました。
そして翌春には、この寮を出てアパートで暮らすことにしたそうです。
なぜならば、彼以外にもその人影を目撃した人が何人かいたから………。それもみんなが二階の部屋で「覗かれて」いたんですって。


この影の正体が「幽霊」なのか、なんらかの方法で覗きをしていた「変質者」なのかはわかりませんが、いずれにしても「怖い」コトには変わりがないでしょう。

すべての現象には必ず原因があるモノですが、そのすべてを科学的根拠になぞらえて否定するよりも、そんな話に未知の可能性を信じて怖がったりするのも、また楽しいですよね。
ただし、実体験はあまりしたくありませんけど。(根が恐がりなんですよ)