僕は天使ぢゃないよ

僕は天使ぢゃないよ [DVD]ぼくが高校生の頃、はっぴいえんど岡林信康など、1960年代後半から1970年代に活躍したアーティストのアルバムが、数多く復刻されたんです。もちろんCDではなくLPレコードです。
1,500円という廉価版なので、なんか買い漁りましたねぇ〜。

その中に、あがた森魚の『僕は天使ぢゃないよ』というアルバムも含まれていました。
収録されている『赤色エレジー』の貧乏臭さが、なんとなく好きだったっんですよね。
それに加えて、大瀧詠一ティン・パン・アレー鈴木慶一などが参加していましたので、思わず買ってしまいました。

でもこのアルバム、あがた森魚が監督・主演した映画『ぼくは天使ぢゃないよ』(1974年)のサウンド・トラックだったんですよ。
見開きの歌詞カードには、映画のハイライトシーンが数多く掲載されていました。
大瀧詠一泉谷しげる、そしてデザイナーの横尾忠則も出演しているらしい。
う〜ん、この映画を観てみたい。
なんとなくそんな思いが、ぼくの心の奥底でじっと身を潜めていました。

そして先日、『僕は天使ぢゃないよ』の原作になっている林静一氏(ロッテ小梅ちゃんの作者)の『赤色エレジー』を、図書館で偶然見つけました。思わず借りて読んだのですが、そのマンガのワン・シーンが、『僕は天使ぢゃないよ』の歌詞カードにも転載されていましたので、
「ああ、映画を観てみたい」
という思いが、再び沸き上がってきたのです。

すると、偶然というものは本当にあるんですね。
たまたまビデオを借りに出かけた蔦屋書店で、『僕は天使ぢゃないよ』のDVDを見つけたんです。
思わず「あっ!!!!!!」って大声を上げちゃいましたよ。
まさかDVDになって復刻されているなんて、本当にビックリしましたね。今から30年も前の作品です。
特典として、今現在のあがた森魚のロング・インタビューも収録されています。

早速レンタルして、ドキドキしながら再生しました。
高校生の頃から思いをはせていた映画と、ようやく出会えるコトができたんですから、本当にうれしかったですね。

映画の内容は、原作である『赤色エレジー』とほぼ同じストーリーですが、カメラアングルやカット割りのテクニックが、まるで北野武監督の作品のようで、当時とすればかなり斬新だったかと思います。
そして、期待していた大瀧詠一横尾忠則の演技力、期待どおりのぎこちなさが微笑ましくて、うん、よかったです。
たくさんのゲストの中でも、特に印象的だったのが、ピエロの格好をした山本コータロー、なんか情けないけどハマっていました。

「不況」という時代背景が今とシンクロしているこの映画、そしてその中で苦悩する若者の生き方を描いたこの作品、何かを得ようとするのではなく、ボーっとしながら観るのがいいでしょう。
その方が、妙に心に届きます。
特にジャパニーズ・ポップスの大御所・大瀧詠一の演技は必見ですよ。マジにボーっとしていますから。