見世物小屋の文化誌

見世物小屋の文化誌』(鵜飼正樹北村皆雄上島敏昭 編著・新宿書房)という、ルポルタージュを読みました。
幼い頃、縁日などでよく見かけた見世物小屋。その裏側をあらゆる側面から捉えた、資料の集大成です。

見世物小屋の看板を描いていた絵師の正体や、役者のプロフィールから実生活、そして口上のノウハウや歴史など、見世物小屋のすべてを知ることができます。

中でも興味を惹いたのは、見世物小屋に出演している人のほとんどが、一般社会からスポイルされた「心身障害者」であったということ。
言うまでもなく、口上で有名な「親の因果が子に報い………」は、「心身障害者」の人たちを指していたんです。
そのことを一番よく知っている彼らは、自らの身体を「見せる」ことによって「お金を稼ぐ」ことに喜びを感じていたらしいんですよ。

でも、「心身に障害のある者」を見世物にするなんてけしからん……という、いかにも常識っぽい法律のお陰で、彼らの多くは職を失ったらしい。
つまり、世間から「心身障害者」と呼ばれている皆さんが自らの意志で(というか、なんの疑いもなく)役を演じているのに、それを拒否する流れが、本人以外のところから出てきて、ついにはスポイルされていた社会から、過剰に守られるようになってしまったんですね。

そこから見世物小屋が衰退していったんでしょう。

死ぬまで見世物小屋で「自分を売り物」にしてきた役者さんも、毎日が楽しかったようですし、それをお金を払って見に来ていたお客さんも、ちょっとした異空間に満足していたはずです。

今ではもうお化け屋敷くらいしかない見世物小屋
もう一度「蛇女」や「タコ女」を見てみたいものです。